データ分析
実データ2,290人の行動分析 — 計測設計がAIのデータ分析を決める
自社で運用しているサービスのデータを、先日まとめて分析しました。カップルの相性をMBTIで診断する、個人開発のWebサービスです。リリースから半年で2,290人が使ってくれて、そのぶんの匿名ログが本番データベースに溜まっていました。
やったことは単純です。LLM(AIアシスタント)に本番DBへ読み取り専用のSQLを発行させ、利用者の性格タイプの分布を集計しました。数十分で、想像していなかった偏りが出てきます。
この記事では、その分析で何が見えたかと、それ以上に、なぜAIに任せてこれが短時間でできたのかを書きます。「AIにデータ分析をやらせたい」と考えている方に、いちばん伝えたいのは後者です。分析AIの賢さより先に、手前のデータの作り方が結果を決めていました。
何が見えたか ── 利用者の性格は、想像よりはっきり偏っていた
先に発見のほうを短くまとめます。数値はすべて本番の実データ(2026年1〜7月・診断主体2,290人)に基づく実測値です。
MBTIは4つの軸(外向/内向・感覚/直観・思考/感情・判断/知覚)でできています。利用者2,290人をこの軸に分解し、一般人口の分布と並べると、直観(N)の割合が突出していました。一般人口では26.7%とレアな属性が、当サービスでは63.5%。おおよそ2.4倍です。感情(F)も一般より高く、内省・柔軟・好奇心にひもづく属性が軒並み多い。恋愛系サービスなのに外向(E)は一般より少ない、という直感に反する結果もついてきました。
もう一つ、行動の非対称が見えました。当サービスは自分の型と相手の型を両方入力するので、ログには「診断を実行した本人の型」と「相手として申告された型」が別々に残ります。タイプごとに「自分で実行した数 ÷ 相手として申告された数」の比を出すと、INFPが1.65、INTPが1.46と、自分から診断を開く側に大きく振れました。逆にESTJは0.41、ISTPは0.43で、恋人に連れてこられて申告される側に回っています。「効率・現実・実務を重視するタイプは自分からは開かない」という、既存のタイプ論と方向が合う結果です。
この非対称には、すぐ反論が思い浮かびます。「相手を誘って一緒にやる」というアプリの構造が、比を歪めているだけではないか、という交絡の疑いです。ちょうど7月に「相手を入れず自分の型だけで診断する」機能を足していたので、そちらのデータを見ました。稼働2日ぶんの507件で、上位はENFP(27.6%)・INTP(16.4%)・INFP。誰かを誘う口実がない条件でも、同じ顔ぶれが並びました。アプリ構造ではなく、性格による自己選択だと確認できたわけです。
どう分析したか ── 分析の実務は「疑いながら進める」こと
ここからがこの記事の本題に近い部分です。上の結論に至るまでの進め方を、分析の実務として書きます。派手な手法は何も使っていません。むしろ地味な順番を守ったことが要点です。
大事なのは3つ目と4つ目です。最初のクロス集計で「非対称がある」と出た時点で、記事にすることはできました。けれど、その数字がアプリの仕様の副産物である可能性を消していない。だから交絡を疑い、別条件(相手不要の新機能)のデータで独立に確かめる工程を挟みました。ここを飛ばすと、「構造が生んだ見かけの傾向」を「性格の傾向」と取り違えます。
そして最後の工程、限界の開示を、分析の一部として最初から組み込んでいます。今回のデータには、正直に書いておくべき限界が3つあります。
1つ目は、これが自己選択サンプルだということです。数字が語るのは「当サービスに来た人」の分布であって、日本人一般の性格分布ではありません。母集団が最初から偏っているので、「日本人はN型が多い」といった一般化はできません。
2つ目は、MBTIという測定そのものの限界です。MBTIは心理測定としては再テスト信頼性などへの批判があり、「科学的に証明された性格」と扱えるものではありません。この分析も、自己申告のタイプ分類の上に成り立っています。
3つ目は、データ品質です。2,290人のうち220人(9.6%)は、診断のたびに異なる型を自己申告していました。入力の誤りか、端末の共用か、あるいは本当に揺れているのか。これも数字に添えて開示すべき事実です。
限界を隠すと分析は強く見えますが、意思決定には使えなくなります。どこまで信じてよいかが読み手に分からないからです。限界を明示するほうが、結果として「この範囲では信じてよい」という判断を助けます。誠実さは、分析の飾りではなく実用の条件です。
なぜAIに任せて短時間でできたのか ── 計測設計が、分析AIの性能より先に効く
ここが、AI導入を検討している方にいちばん伝えたい部分です。
今回の分析は、LLMが本番DBに読み取り専用のSQLを直接発行し、集計から交差検証まで短時間で終えました。私が細かく指示を出さなくても、AIが自分でクエリを組み立てて答えにたどり着けた。これはAIが賢いからというより、AIが読みにいったデータが最初から整っていたからです。具体的には、次の3つが揃っていました。
もしこの逆だったら、と考えると分かりやすいと思います。ログが複数テーブルに散らばり、タイプの表記が「ENFP」「enfp」「外向直観…」と揺れ、同一人物を1件に丸める手段がなければ、AIはまず集計にたどり着けません。仮にクエリが通っても、汚れたデータの上で出た数字は信用できない。分析AIをどれだけ賢いものにしても、この手前で詰まります。
「AIにデータ分析を任せたい」という相談を受けるとき、話はたいてい「どのモデルを使うか」から始まります。けれど本当に結果を左右するのは、その手前の計測スキーマの設計です。何を、どの粒度で、どれだけ汚れないように記録しているか。ここが整っていれば、分析AIは力を発揮します。整っていなければ、賢いモデルほど「もっともらしく間違える」だけです。
これは、私たちがRAGの精度設計で繰り返し確かめてきたことと同じ構造です。RAGでも、本番で精度を決めるのはモデルではなくデータ層でした(商社の文書検索を4層設計で立て直した事例)。検索でも分析でも、AIの手前のデータの作り方が上限を決めます。順番を間違えないことが、いちばん費用対効果の高い投資になります。
データがあると、意思決定の解像度が変わる
最後に、このデータを使うとどんな判断ができるようになるか、という応用の話をします。ここは実績レポートではなく、あくまで思考の例示です。
利用者が内省・言語化を好む層に偏っている、という一つの事実から、少なくとも2つの方向が引けます。一つは、刺さっている層にさらに深く届ける方向。彼らが好む語彙や機能に寄せ、体験を濃くする。もう一つは、届いていない実務型の層(ESTJやISTPなど)に広げる方向。この層には自己分析の語りかけは響きにくいので、入口のメッセージも獲得チャネルも作り替える必要があります。どちらを選ぶかで、打ち手はまったく変わります。データがあると、この分岐を「なんとなく」ではなく具体的な層の名前で語れるようになる。それが解像度が上がるということです。
ここは正直に書いておきます。当サービスは現時点でマーケティング予算を投入しておらず、上のどちらの方向に動くか、そもそも施策を打つか自体がまだ検討段階です。だからこの節は成功事例ではありません。「データが手元にあると、意思決定の分岐がここまで具体的に見える」という、その一点だけをお伝えしたいものです。施策の実行と効果は、動かしたときに改めて書きます。
まとめ
一つの小さな分析から、伝えたいことは3つです。自社プロダクトの実データを見ると、利用者は想像よりはっきり偏っていた。その分析をAIが短時間でこなせたのは、計測スキーマが最初から整っていたから。そして、データがあれば意思決定の分岐を具体的に語れる。順番として大事なのは真ん中です。AIにデータ分析を任せたいなら、モデル選びより先に、記録のしかたを設計してください。
同じ分析を、利用者向けの読み物として当サービス本体にも書きました(性格診断を「自分から」やるのは、いつも同じ性格の人だった)。数字は同じですが、そちらは「どんな人が使っているか」を楽しんで読める切り口にしています。
参考文献
- MBTI一般人口分布(Myers-Briggs財団/CPP社の集計に基づく値) — Crown Counseling: Myers-Briggs Statistics / Personality Type Statistics
- 開放性(Big Fiveの一次元、MBTIの直観と概念的に重なる) — Openness to experience, Wikipedia
- オンラインSNS上でINFP・INFJが多数を占める偏りの分析 — When LLM Meets Hypergraph: A Sociological Analysis on Personality via Online Social Networks (arXiv 2407.03568)
この記事は、AIツールを活用して作成し、Cognisant編集部がファクトチェック・編集・監修を行っています。掲載している自社数値は、運営サービスの本番DB(2026年1〜7月・診断主体2,290人・有効行5,138)から計測した実測値です。MBTIは自己申告に基づく性格分類であり、学術的な信頼性・妥当性には議論があります。数値は自サービス利用者という偏ったサンプルの傾向であり、日本人一般やMBTI理論そのものを証明するものではありません。診断頻度と相性の良し悪しは無関係です。
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